雨雲を警戒しながらの緊張するナイフリッジの四阿山
3月29日にエコツアー「四阿山スノーシュー・パルコール嬬恋ゴンドラ使用往復コース」にO様、S様をご案内させていただきました。
四阿山スノーシュー登山(パルコール嬬恋ゴンドラ使用)ガイドのご案内 浅間・吾妻エコツーリズム協会
2月にスノーシューを初体験、続いてはアイゼンを履けるコースとして四阿山を指定してくる積極的なお二人です。この日に向けて用具も準備したとのこと。
その心意気に、時間の許す限り私の知識をお伝えさせていただきます。
まずお二人は山岳域でオールマイティに使用できる輪かんを持ち込み着用。
本日の様な残雪期には軽快です。 (1~3月上旬の深雪期はスノーシューが強いです)
本日の天気予報は曇りのち雨、四阿山のナイフリッジが見える頃には全天雲になってきています。
樹林内で風も無くしっとりとした空気に汗も滲むので薄着で飛ばしてきました。
ここまでは余裕で来ています。では休憩もそこそこに先を急ぎますよ。
先ほど見えていた急斜面に差し掛かった所で輪かんからアイゼンに変更です。
右手にはピッケル、左手には短めに調整したストックを持ちバランス補助として歩きます。
ナイフリッジの歩行など危険個所を通過する際にはザックを下す余裕が無い事も考えられます。気象の変化で風が出れば体温を奪われ行動能力の著しい低下も懸念されるので事前にヤッケも着用します。
本日は先行者のトレースがありステップも安定しています。カッティングの必要は無いですが、慎重に前後しながら歩きます。用具の使い方もレクチャしながらです。
では、いざチャレンジ!
基本の足運び、ピッケルを支点とする急斜面の攻略、ストックの補助が飲み込んでもらえたら視界の中に入る急斜面に臆する自分の気持ちを制御して前進しなければなりません。
まだ風は出てきていません、ナイフリッジも安定して立てますよ。
しかし怖いと思う自分の気持ちが大切、無理は禁物! 対処法をすぐフォローしますので先に歩いてください。ちょっとスパルタ教育でしたでしょうか...(汗)
おや!? 立ち止まっているようですね。
すぐ駆けつけると、脚が前に出ない、とのコメント。 これ!これが非常に大事なのです!
危険を感じたらまず立ち止まり考える。怖さを感じた身体は柔軟性が低下し思わぬ転倒の引き金になるのです。
無理もありません、初めてのアイゼン歩行で靴の幅とちょっとしかないナイフリッジの上です。眼下に広がる数百メートルの雪斜面の下まで吸い込まれそうになる恐怖がその場にあるのですから。
雪の状況、一歩の置き方、バランスの保持をひとつひとつ再確認しながらチャレンジできる自分を取り戻して再スタート。
やったー! 山頂を踏めました!
天候は何とか登頂を許してくれましたがすでに展望は利きません。
しかも浅間山に雪雲がかかっています、もう1時間しないうちにここも包まれます。
休憩は無し、証拠写真を撮ったら急いで安全地帯まで逃げましょう!
下降時の注意点、用具の操作をレクチャしながらダッシュダッシュ!
安全地帯に到着する直前に雪雲に包まれてしまいましたが無事切り抜けました。
登りで脚が前に出なかった場所は下りでは一層恐怖が増すものですが難なく通過。
ほんの少しのレクチャがあっただけで自分自身の幅を大きく広げられたようです。
さすが社会の重要な部分を担われているお二人です。タフネスに感服しました。
帰路は遠望の利かない樹林と湿った雪の中を登頂の喜びを噛みしめながら黙々と歩いてきました。
雨雪雲に追い立てられながら、のんびりできる時間も無く補給食も最小限でロープウェイ駅までたどり着き、遅いお昼とティータイムで緊張を解きほぐしたら明日へ向けて気持ちを切り替えていきます。
駐車場へ戻ると雪ではなく雨粒が落ちています。山頂は完全に雲の中です。
今日も無事にご案内が出来ました。
自慢の大展望を楽しんでもらえなかった事が非常に心残りですが、お客様の求めていた部分をある程度はご提供できたのではないか?次にはどんな事をご提供できるか?を考えながら帰途に着きました。
四阿山スノーシュー登山(パルコール嬬恋ゴンドラ使用)ガイドのご案内 浅間・吾妻エコツーリズム協会
ツアー実施日:2015年3月29日
ガイド担当:小池 寛喜(記)